「されど、夢の中で上様は、私に向かっ
「されど、夢の中で上様は、私に向かって “ 逃げよ、お濃 ” とせになるのです」
「それが?」
「あの上様の必死の、とてもただ事とは思えませぬ」
信長は深い溜め息を漏らすと、やれやれと首を振った。
「その夢の中で寺は燃えているのであろう?」
「はい」
「火事が起これば、“ 危ない ” “ 逃げよ ” と声をかけるのが、人の道理ではないのか?」
「……」
そう言われてしまうと濃姫も返す言葉がなかった。
確かに、夢の内容を気にするあまり、信長の生死に関わる予言的なものだと、勝手に思い込んでいた節はある。
考え方によっては、寺が火災に見舞われるという、単純な解釈も出来るのだ。
そこに信長の命の危機を当てめるのは、か早計だったかも知れない。【生髮維他命】維他命補充品真的有助改善脫髮嗎? @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::
「……されど、…されど」
濃姫は視線を膝元に落としつつ、いた。
どうしても胸の奥にある、もやもやした物が消えてくれないのだ。
これまでにない大きな不安と悲壮感に、濃姫は精神をまれそうだった。
すると、濃姫の背後に控えていた齋の局が
「上様──まことに失礼ながら、御台様のお気持ち、今少しおみ取り下さいませ!」
畳の上に両手をつかえるなり、らなくなったように声を上げた。
「御台様はただの夢と分かっておられながらも、その不吉さ故に、上様のご安否を心の底から案じて参られたのです!」
「…齋」
濃姫は軽く首を振り、彼女を制そうとするが、齋の局は尚も進言する。
「決して、己が不安である故、気楽でいられないが故の、我が勝手で申されているのではないのです。
ひとえに、ごたる上様の御身を案じる、奥方としての心。上様に対する故にございます」
「──」
「上様がまだ尾張の大名であった頃からまで、常に上様のことを第一に考えて参られたのは、御台様にございます。
どうか…、御台様のお心をおみ取りになられ、本能寺での茶会はお取り止め下さいますよう、願いが畳にすり付くかと思われる程、低く頭を下げた。
濃姫はそれを見て、申し訳なく思いつつも、今は信長を説得する他に手立てはないと考え、齋の局と同じように低く頭を垂れた。
信長は二人の黒頭を、まるでくしてから「ふむ…」と腕組みをして、そのままじっと考え込んだ。
濃姫も齋も頭を上げることなく、ひたすら同じ体勢で、信長から声がかかるのを待ち続けた。
すると程なくして
「その夢では、儂がそなたに向かって “ 逃げよ ” と、そう申したのだな?」
信長は再確認するように訊ねた。
濃姫は首をもたげ、小さく首肯する。
「左様にございます」
「つまり、その場にはそなたもおったという事になるな?」
「…しかとは分かりませぬが。…はい」
「ならばそなたも付いて参れ」
濃姫は双眼をき、齋の局共々『 え? 』という表情で信長を見た。
「何を驚いておる。京での茶会を取り止めには出来ぬが、そんなに儂の身が心配ならば、
そなたも京へ付いて参れと申しておるのじゃ。その夢のようにな」
「…う、上様」
思いがけない発言に、濃姫は軽くする。
「儂は夢のお告げなど信じぬが、そなたの夢が間違っておることを証明してやることは出来る。
共に本能寺へと参り、その不必要な念を消し去るが良かろう」
信長は気楽そうに言うが、どうしたものかと、濃姫は悩んでいた。
「それは、大変有り難きではございますが……畏れながら上様」
「何じゃ」
「中国攻めの為のご出陣に、正室である私が共に参って、本当によろしいのでしょうか?」
武将が戦線に
Komentarze