三津の額に手を当てて真面目に問いかけ
三津の額に手を当てて真面目に問いかける口調は診察する医者そのもの。
「そうなんですよ寝不足で。でもお咎めはなしでしたよ!ただ眠れなくなっちゃって。」
朝も何もせずゆっくりさせてもらったけど眠れなかったと眉尻を下げた。
「そうですか。じゃあ横になっててください。」
てきぱきと床を述べてどうぞと布団をぽんぽん叩いた。
「いやいや。」
それなら邪魔しないように一応設けられた仮の自室へ行きますと言ったが,
「私の小姓ですよね?だったら私の言う事聞きなさい。」
笑顔で凄まれて三津は戸惑いながらも布団に入った。
「何か考え事でもしてたんですか?」
布団の脇に胡座をかいて優しく規則正しくぽん……ぽん……と布団を叩いた。
「かも知れないですね。」 【生髮維他命】維他命補充品真的有助改善脫髮嗎? @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::
でも何を考えてたか分からないと笑った。
「そうですか。今も別に寝ようと思わなくてもいいですよ。ただこうしてるだけでいいです。」
規則正しく刻まれる振動と久坂の穏やかな声に頬を緩ませると次第に眠気がやって来た。
布団も段々と自分の体温で温もって来て三津の瞼はゆっくりと閉ざされた。
「おやすみなさい。」
三津の頭を撫でて静かに側から離れた。
『うちの愛しい妻は変わりなく過ごしてるかな。』
紙に向かって目元を綻ばせ愛しいその顔を思い浮かべながら筆を走らせた。
文だけでは味気ない何か贈り物でもしてやろうか。
『三津さんに贈り物選びを手伝ってもらうのも有りだが……。私とでは危険すぎて桂さんは許してくれないだろうな。』
ふっと笑って静かに上下する布団に目をやった。
「玄瑞。」
『来たな。』
三津をゆっくりさせてやりたいのに。
舌打ちをして音を立てない様に障子の方へ歩み寄った。「静かに。三津さん寝てるから。」
少しだけ障子を開けて布団を顎で差した。
「寝てる?大丈夫なの?」
吉田は小声で中を覗き込んだ。
「熱はない。疲れが溜まってるのかもしれないから今はそっとしてやって。」
桂はそれで久坂に三津を任せたんだと納得して,吉田は分かったとだけ言い残して引き下がった。
そっと戸を閉めて枕元にしゃがみ込んで頭を撫でてみた。
「んっ……。」
少し声を漏らしてもぞもぞと身動ぐがまたすやすやと寝息を立てる。
「妹とは……こんな感じなんですかね?松陰先生。」
先生が文を見つめる感覚はこんなものだったんだろうかと三津の寝顔を見て思う。
それからまた文をしたためて本を読み薬箱を整理しちらりと布団に目をやる。
『生きてるよな?』
布団はちゃんと上下に動いているが静か過ぎて不安になる。
『相当疲れてるのか?』
もう一度顔を覗きに行くと,
「玄瑞。入るよ。」
お迎えの声にどうぞと答えた。障子を開けて中を見た桂は口角を上げた。
「いつから寝てる?」
「桂さんが出掛けてからずっとです。息してるか心配で。」
「心労が溜まってるのかね……。癒やしてやれなくて申し訳ないな。」
側に寄って手の甲で頬を撫でるとくすぐったそうに笑って身動いだ。
「三津さんはあまり弱い所を見せませんか?」
「そうだな。笑って誤魔化すよ。まだ過去の約束に囚われてるから。」
『過去……。あの恋仲か……。』
ならば踏み込むのは野暮だろうと久坂は口を噤んだ。
「彼の妹とね……。約束したそうなんだ。妹さんが笑っててと三津に約束を取りつけて,お兄さんの後を追って自害した。」
久坂は一瞬呼吸の仕方を忘れた。
悲しげな目で笑って三津の頭を撫でる桂の顔に釘付けになった。
それからゆっくりと三津に目を落とした。
「笑っていれば彼と妹さんが報われると思ってるんだろうね。」
『死んだのは恋仲だけじゃなかったのか……。』
じっと寝顔を見つめていると僅かに瞼が動いた。
「……起きた?」
桂は顔を寄せて耳元でおはようと囁いた。その声にはっと目を見開いて桂と久坂の顔を交互に何度も見た。
「私……めっちゃ寝た?」
寝起きの間抜けな声に久坂の口元が緩む。
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