三津の肩がビクッと揺れた。

三津の肩がビクッと揺れた。

三津の肩がビクッと揺れた。

「私っ…,言ってませんっ!!」

「分かってる,君は嘘がつけない。目を見たら分かる。

だから早く目を見て安心したかったんだ。」

それに疑ったのはそっちじゃない。三津の気持ちだ。顯赫植髮

だから手は,遠慮がちに三津の頬を撫でる。

「君は間者紛いの事は絶対しない。

だから盆屋で土方君が求めたのは情報なんかじゃなく三津,君自身じゃないのか?

浮気なんか…してないよね?」

三津は力一杯首を振った。

「それなら良かった。

居場所を嗅ぎつけられたのは彼らを甘く見てた私が悪かったんだ,用心しないと…。

それと一つ,聞いて欲しい事がある。」

抱きしめる腕に力がこもる。

三津の中で不安が渦巻いた。

もう会うのがこれで最後と告げられそうで,怖い。別れを惜しむ言葉なら耳を塞ぎたい。

心も体も突き放されるなら力を振り絞ってしがみつきたい。

まだ何も言われてないのに泣きそう。

桂の胸に顔を押し付けて強く目を瞑る。

良くない事を言われると思い込んだ三津の首筋に桂はそっと唇を寄せた。

その優しい感触に三津は睫毛を震わせた。

「三津,私の所へ来て欲しい。」

思ってもみなかった言葉が,耳元で囁かれた。

桂の決意は別離じゃなかった。

「それって,長州藩邸に……ですか?」

まだ桂の言葉が信じられなくて恐る恐る顔を上げた。

桂は真剣な顔で頷いて背中に回していた手でしっかり肩を掴んだ。

「そう,今のままじゃ肝心な時に三津を守れない。

新選組を目の敵にして君を狙う輩や,手篭めにしようとする不届き者がいるからね。」

『それに土方君の部屋で共に過ごしているうちに,気持ちまで彼に奪われてしまってはたまったもんじゃない。』

泣きそうな顔のまま見上げてくる三津の頬を手の平で包み込んだ。

三津の頭の中では一瞬にして色んな考えが駆け巡った。

『桂さんと一緒にいたい。』

いつ何処で何が起きて,誰がどうなるか分からない。

それは身を持って知ってる。

それを思えば遠くから無事を祈るだけじゃ足りないと思う。

傍に居て出来る事をしてあげたい。

近くにいないと不安なのは一緒。

「でも…それは無理ですよ……。」

『どうやって壬生から出る?正直に好きな人の所に行くって言う?』

そんな考えしか出てこない。

桂の言葉は嬉しいけど,その気持ちとは裏腹に,現実味がなくて初めから無理だと思ったから。

「何時でも何処へでも迎えに行くさ。

あ,攫いに行くの方が正しいか。それならば悪者は私だけで済む。

君は長州者に騙されて連れ去られた可哀相な娘。

私は君を誑かして連れ去った悪い男。

周りはそう見る,それでいい。」

桂は前向きだった。我ながらいい考えだろ?と笑ってみせた。

「そんなっ!桂さんが悪者になるやなんて……。」

「もう悪者だよ,彼らからしたら私は極悪人だ。

だから三津は何も心配しなくていい。」

言葉の一つ一つが温かい。触れる手が優し過ぎる。

吸い寄せられるように口付けを交わしたら,離れられない気がした。

こうしてたまに会うだけじゃ,僅かな時間触れ合うだけじゃ,物足りなく感じてしまう。しばらく無言で強く抱きしめ合った。

静寂の中に川のせせらぎと,カサカサと風に揺れる木々の乾いた音が響く。

「いないっ!!」

急に男の焦った声がして,三津の肩が跳ね上がった。

「お三津ちゃん何処行ったんだ?」

「あ…。」

自分を探してると気付いて小さく声を漏らした。

どうやらこの橋の上に居るみたい。見つからないか冷や汗を掻いた。

「何だもう気が付いちゃったのか。通り過ぎるまでこのままでいて。」

桂が態と近すぎるぐらい唇を寄せて耳元で囁いた。

そのくすぐったさに身を捩りながら頷いた。

「これマズくないか?」

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