「…貴女は
「…貴女は。変わり者だと、言われたことは、ありませんか?どうかしてますよ…」
沖田の声は泣いていた。寒さだけじゃなく涙に濡れ、震えた声色が桜司郎の鼓膜を震わす。
「変わり者…。trust company hong kong それで結構です。沖田先生のつらい時に、傍に居られるのなら…変わり者でも何でも構いません」
吐く息が白く視界を染めた。桜司郎の声に、沖田は顔を上げる。
青白い顔に、目元と頬だけを赤くしていた。
「どうして貴女は…こういう時に限って私の傍にいるのでしょう…。どうして私の心が揺らいでいる時に限って、私の欲する言葉をかけてくれるのでしょうか」
「沖田先生…」
「そんな、そんな風に…切なく呼ばないで下さい。甘えたくなってしまう…ッ」
沖田の頬に涙が幾筋も伝った。もう彼の精神は限界だったのだろう。
大好きな山南の死を抱えるには一人では重すぎたのだ。
稀代の天才剣士と呼ばれた沖田も人の子なのだ。まるで迷い子のようなその表情に、桜司郎は胸が締め付けられるような感覚と共に顔を歪める。
「…こんな時くらい甘えて下さい、沖田先生。辛かった、ですね。良く御役目を全うされましたね」
桜司郎はそう言うと、おずおずと沖田の首の後ろと背中に手を回し自身に引き寄せた。抵抗はない。
桜司郎に下心は一切無く、目の前の儚く泣く人を抱き締めたいと思ったのだ。
ふわりと猫のような柔らかい髪を撫で、冷えきった身体を温めるように背を摩る。
他に慰めの言葉は持ち合わせていなかった。
ただ寄り添うことしか出来ないが、きっとそれでもいいのだろう。
この悲しみは時間しか和らげてくれないのだから。そして沖田に傘を傾けると、彼の身体に積もった雪を手で払い除けた。
まるで山南の命を奪った自身への戒めと言わんばかりに、沖田はそこから動こうとしない。
このままでは沖田までも死んでしまうと桜司郎は泣きたくなった。
「沖田先生…、嫌だったらもう一度言ってください」
桜司郎は横に座ると、沖田が口を開くまで黙っていようと決意をする。そして自身の羽織を脱ぐと、沖田の肩に掛けた。
だが、沖田は拒絶する様子は無い。桜司郎はそれに安堵した。
空を見上げれば、灰色の雲が全体を覆い、白く儚い雪が淡々と降り注ぐ。降り止む様子は無かった。
──どれだけの時が経っただろうか。
その間、桜司郎は寒いとも言わず、歯を鳴らすこともせずに横に居続けた。
やがて根負けした様に、顔を伏せたまま沖田が口を開く。一方で、土方は自室へ戻ると力無く座り込んだ。
散々隊士に切腹を命じて来たというのに、身内の死だけ殊更に悲しむというのは都合が良すぎるのだろう。
だが、あそこまで潔く見事な最期は見た事がなかった。土方は片手で顔を覆い、歯を食い縛る。
「歳……入っても良いか」
そこへ障子の向こうから近藤の声が聞こえた。何時もの覇気は失われている。
弱さを見せたく無かったが、言いたいこともあった土方は受け入れることにした。
「ああ…。入れよ」
その返事と共に、障子が開いては近藤が入ってくる。その目には大粒の涙が浮かんでおり、土方はギョッとして近藤を見た。
「歳……。俺ァ、俺ァ……ッ」
そう言いながら、土方の横に座ると腕の袖に手を当てて近藤は泣き出す。
土方自身も泣きそうになっていたが、近藤がそれ以上に泣くものだから思わず涙が引っ込んだ。
苦笑いを浮かべ、胡座を掻き直す。
「……山南はな、隊を守るために腹を詰めたんだ。総長が局中法度で裁かれりゃあ、後はもう誰も破ることは出来ねえと」
お前と伊東がやっちまったことを山南が尻拭いしたんだ、と言いたかったがその言葉だけは飲み込んだ。
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